作ること”から”想うこと

(1)外枠の設計 ▼
(2)イメージ構想 ▼
(3)型の制作 ▼
(4)作動テスト ▼
(5)塗装と最終仕上げ ▼
(6)あとがき ▼

外枠の設計と制作


一つ目の試作品

外枠部分は人間の体に例えると骨格と皮膚に相当するもの。

これが失敗するとモノとしては破綻しているのと同じなので最も多くの時間とコストが投入された苦心の品とも言えます。

イメージ図から設計図を何度も書き直し、その設計図を元に昔から知り合いの木工職人の方にお願いして、外枠を何度も作り直し一つ目の試作品が完成。


・・が、掛時計をメンテナンスのために分解できる前提の設計であったため、部品数も組立工程も複雑化してしまいまた外観も継ぎ目が非常に目立ってしまう。
イメージしやすいのは「同じ大きさの額縁を重ねた形状」である。
分解できるのはいいが、コストが跳ね上がってしまいとてもではないが手造りの小売品にしても想定価格が 現実的ではなくなった。

分解できる構造/継ぎ目

そこで今度は分解できない前提の外枠を再設計して、さらなる試作品を作る。
製材・組立・調整を最小限で実現するため、無駄なものは全て排除する。
そして二つ目の試作品が完成したが・・。
モノとしてはシンプルで、個人的にはこのようなものが好きではあるが、やはり、何かが足りないというか・・目を引くような部分は全く無い。
イメージは「厚みのある小さい額縁のような形状」である。
出来あがったこの試作品に特徴を持たせるため、いろいろなデコレートを 試してみるが、手間が掛かる割りには、思ったようなモノにならない。

外枠の再設計/設計図を形に 二つ目の試作品

それに「悪くはないが、本質的に何かが違う」という思いが離れない。
いろいろパターンをつくり、二つの試作品を眺めながら、設計図を書き直しているうちに

「加工のしやすさとコストも考えて材料の見直しをする」
「分解可能でメンテナンスをしやすいようにする」
「デザインを犠牲にしないで、且つ、構造をシンプルにする」

という部分は実現しなければ、良くも悪くも作りにくいものになる。


再度設計図を書き直す
3つの条件を満たせる外枠が完成

そして、これら3つの条件を満たせる外枠が完成する。
やっと「はじめの一歩」が踏み出せることとなった。


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イメージ構想


掛時計の骨格と皮膚は目処はついた。
次は顔である「文字盤のイメージ」に着手する。
自分が掛時計を作ろうと思ったのは、どの店でみても「欲しい」と思わせてくれる「顔」が殆ど無かったからだ。
自分が欲しいと思うもの、こんなもの見たこと無いなと思うものをどんどん書いていく。

文字盤のイメージ

描いたイメージから実現可能なデザインに絞りこんで、立体化のために組み合わせる材料を検証する。
そして、文字盤の型を制作するための材料をあちこち探しにいく。

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型の制作


集めてきた材料を基にして、デザインした平面の文字盤を立体化する。
例えば、この画像は「MODEL D」と「MODEL E」に使う文字盤の原型で最終の型が完成するまでに4回ほど、仮の型を取りながら微調整を繰り返した。

仮の型

直径16センチ近くの円盤型となると予想していた以上に手間が掛かってしまった。
なぜ型が必要かというと、手作りでありながら品質は一定以上を保ちたいからだ。
完成するモノがどれも見た目ですぐにわかる位に出来がバラけるようでは苦しい。
また、一部を除き、使う材料が安定して集められないものは、商品として成立しにくいと思われる。
しかし、型があるからといって、すぐに文字盤が出来上がるわけでもない。
あくまで型から出来上がるものは原石であり、そこから各部分のヒケや欠けの部分を一箇所づつ修正していく。
こうして出来上がった文字盤用の立体物を板に固定して作動テストをする。

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作動テスト


立体物を固定した文字盤に時計ムーブメントを取り付け、針を装着する。
組み立てる工程では、一番緊張する瞬間。
針が文字盤に引っかかると時計としては使えないモノとなってしまうからだ。
もちろん、設計の段階でクリアランスは計算しているが、実際に現物で確認するまでは、どうしても不安はあったりします。

一番緊張する瞬間

まずは針をグルグル回して、文字盤に引っかかる箇所が無いかチェックする。
それと同じくらいに重要なのが、時刻表示に狂いが出ていないかのチェック。
例えば、時針(短針)は6時キッチリなのに、分針(長針)が0分以外のところを指し示していないか?
他にも針同士が擦れたりしていないかのチェックも忘れない。
針同士が擦れると時刻表示が狂いやすく、電池の消耗も極端に早くなってしまう。
ここまで問題が無ければ、電池を入れて実働に狂いが出ていないかをチェック。
少なくとも24時間を経過させて、実際の作動の上で時刻のズレがないかを目視。
時刻表示に問題が無ければ、いよいよ最後の作業工程になる。

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塗装と最終仕上げ


文字盤への塗装

まずはカラーリング、文字盤のデザインをした段階で決定しているときもあるし、この段階で数パターンの塗装してみて、その中からベストであろうモノを選ぶときもある。
まずは文字盤に塗装を施す。
モノによっては一枚の文字盤に20色を塗りつけるモデルもあり、気が抜けない。
「顔」なので、これを失敗すると見栄えが大幅にダウンしてしまうので慎重に。


そして、次は外枠にも塗装を施す。
しかし、外枠は製材したての状態では塗装できないので、幾度かのペーパー掛けと下地処理を施した状態で初めて、本塗装に掛かることができます。
本塗装もベースとなるカラーを重ね塗りした後に、さらに表面を落ち着かせるためにクリアコート塗装を重ね塗りする。

外壁への塗装

しっかりと乾燥させた後、文字盤を外枠中央部に固定。
更に前面部となる外枠には透明のアクリル板、背面部となる外枠には背板を取り付ける。
そして、各部材を張り合わせることで、ひとつの掛時計の誕生となる。

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あとがき


自分が掛時計を作ろうと思ったのは、どの店でみても「欲しい」と思わせてくれる「顔」の掛時計があまり見かけないですね。
今どき、こだわりが無ければ100円ショップでも掛時計は買えてしまいます。
性能は言うまでもなく日常生活で使うことが前提であれば、既に完成の領域に達しているし、何よりも安い価格であることが当たり前。
安いのが悪いわけではなく、自分も消費する側としては、とてもありがたいこと。
しかし、安いものは「やっぱりそれなり」なモノなのかなと。
よく見れば、コストダウンのためにいろんな部分が「お安く」作られている。
その最たる部分は「文字盤」に集約されていると思う。
凝ったデザインなんか採用したら、価格が跳ね上がり相手にもされない。
その昔、大手メーカーから凝ったデザインの掛時計はそれなりに発売されていました。
しかし、いつのまにやら「安けりゃいい」が普通になり、結果としてどれを見ても似たような「顔」と「価格」のモノが当たり前になってしまった。
「シンプル」であることと「シンプルらしく見える」〜本質は全く異なると思います。
言い方は悪いが、安く作ろうとすれば「シンプルらしく」の方向に流れる結果となる。
材料も手間も最小限で済ますことができるのだから。
こんな現状を悪いとは思わないが、良いとも言えないと考えている。
だから「こんな掛時計たち」を作ってみました。

TOKYO CLOCK 畑道人
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